プロフェッショナルを目指し、愚直に変化を続ける集団に。
大塚メカトロニクス株式会社
代表取締役社長 依田 優治
1951年11月7日生まれ
信州大学工学部卒業。
凸版印刷、大塚製薬などを経て現職に就任。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。
人事としての経験から得た、人を“正しく捉える”ことの重要性。
まず私自身のキャリアを振り返りますが、四年制大学を卒業後、大手印刷会社に技術者として入社しました。仕事としてはおもしろみがあったのですが、「もっといろんなものの見方、捉え方をしたい」という思いから、大学院に進むことを決めました。その後大塚製薬に入社し、あるとき本社人事に配属となりました。思えば、これが私のキャリアにとって大きな転機となりました。
人事として全国の支店や研究所などで働くさまざまな従業員と一人ずつ面談を行い、その結果をレポートするという役割だったのですが、この経験から多くのことを学びました。
人によって能力差があることはもちろん、置かれている状況やその捉え方、仕事に対する向き合い方など、まさに人それぞれ。そこに違いがあることを認識したうえで、ある側面だけを捉えるのではなく、複眼的に「人を見る」ことの重要性を学んだのです。
先ほど述べたように、もともと私は「柔軟に物事を捉えたい」という志向でしたから、そんな私にとってはぴったりの仕事だったのかもしれませんね。
その後、大塚電子(大塚製薬グループ)での役員を経て現在に至ります。経営者となった今でも、人事としての経験が間違いなく活きています。社員一人ひとりを正しく捉え、適切な役割を担ってもらう。その結果として社員が成長し、ひいては会社が成長する、そのことを常に意識しています。
柔軟性を持ち、変化を続けることが進化に繋がる。
自動車のヘッドライトテスター(計測器)などを製造する当社では、電気、機械系のエンジニアを中心にさまざまなバックグラウンドを持つ社員が在籍していますが、そのうち約8割は中途入社です。年齢や社歴に関わらず、自らの意志でチャンスを手にできるよう、その環境をつくるのが今の私の仕事です。
例えば最近では、各部署の最年少者で構成される「業務改善委員会」を発足し、社員がそれぞれの観点で意見を出せる場を設けました。経営者である私や各部門長も、それによってまた新たな視点を持ち、柔軟性が担保できるようになっています。
せっかく社員が自発的に声を上げても、それが変化に繋がらなければ何の意味もありません。そして、変化を続けなければ、進化していくこともありません。この感覚も人事の経験による賜物かもしれませんね。
こうした取り組みも一因となっていると思いますが、当社では定年退職や家庭の事情を除けば、退職者はほぼゼロです。社員一人ひとりが働きやすいと思える環境があってこそ、初めて個人のパフォーマンスが期待できると考えています。
「プロ意識」を持って仕事に取り組めるか。
仕事上、海外のビジネスシーンに触れることも多いのですが、そこではまた日本とは異なる「捉え方」をしています。
日本では個人を評価する際、「どういう会社に所属しているか」「どういう肩書か」に着目することが多いですが、海外では「どういう仕事をしているのか」「何ができるのか」という部分に着目します。つまり、「プロフェッショナルであるか」が重要であり、ステータスなのです。これには非常に共感できます。
「自分はこういう仕事のプロになる」という意志をもっているか、そうでないかでは、仕事のパフォーマンスや成長スピードに大きな差が出ると思います。
1年ほど前、ある大手企業で経験を積んだ人材を中途採用しました。彼はまさにプロ意識を持った人材でした。過去の経験にとらわれることなく、新しい環境に経験をうまく移植し、そこで成果をあげることでさらに成長していく。そのサイクルをすぐに確立したのです。
もちろん、それを実現する能力を持ち合わせていることが必要ですが、それ以上に彼のプロ意識が如実に表れていると感じます。仕事の進め方やスピード、発言のどれをとってみても意識の高さはうかがえますし、周囲の社員にも良い影響が出ていることが見て取れます。今では彼はチームリーダーを務め、全社売上の4分の1を占めるプロジェクトを牽引してくれています。
県外からのUターンで入社した社員もいますが、例えばUターンというのもきっかけの一つに過ぎません。それを機に、あらためてどういう意志を持って入社するか、入社後に何を成すかが重要ですし、私としても可能な限りその思いに応えていきたい。
そういう意味では、私もプロ意識を持って、環境づくりにますます力を注いでいきたいと考えています。