広島で培った技術と意志が、グローバル市場をリードする。
ベバストジャパン株式会社
代表取締役社長 ブルース・ピアス
1988年アイルランド・コーク工科大卒。バネメーカーやオーディオ機器メーカなどを経て2014年にベバストジャパン入社。2015年に執行役員、2017年より現職。
※所属・役職等は取材時点のものです。
技術立国・日本でのキャリアアップを目指してアイルランドから来日。
まず私自身のプロフィールですが、大学卒業後すぐに、日本で働きながら技術研修に参加する機会を得て、2年間にわたり機械設計と日本語を学びました。バブルの真っ只中、1988年のことです。
来日を決めた理由としては、当時の日本は、米国よりも経済が成長するかもしれないと思えるような勢いがあったことと、技術立国である日本で経験を積むことで、自分のキャリアを素晴らしいものにできるのではないかという期待があったからです。
もともと大学で機械設計を学んでいた私にとって、来日はまたとない大きなチャンスでした。当初は、しばらく日本で暮らし 、数年後には他の国でも経験を積もうと考えていたのですが、日本の文化はとても奥深く、想像以上に理解に時間がかかってしまい、いつのまにか30年以上日本に住み続けています。
今もまだ理解しきれていませんが(笑)、幸い、日本を中心にしながら世界中を飛び回る仕事に就いていますので、当初の目標は達成しているといえるかもしれません。
そもそも、母国のアイルランドでは、「大学を卒業したらどこで働くの?」と聞かれれば、それは「どこの国で働くの?」と聞かれるのと同じぐらい、働く場所を意識することがありません。むしろ重要なのは「言語」で、アイルランドの場合は英語圏なので、英語で仕事ができるところならどこでも大丈夫です。
事実、私の兄弟も一人はイギリス、一人はオランダに住んでいました。もちろん母国は大好きですので、戻るという選択肢もありますが、私にとっては仕事あっての人生ですから、今の生活を全て捨ててまで戻りたいというほどではありません。
現在の環境には満足していますし、日本に暮らして30年あまりになりますが、今でも日本人のプロフェッショナリズムには感心させられることが多くあります。例えば、列車の運行です。
駅のホームでは、列車はしるしのところでぴたりと止まりますし、驚くほど時間通りに来ます。日本人にとっては当たり前のことかもしれませんが、世界中でこれほど正確に物事が進められている国を私は見たことがありません。これはとてもすごいことだと思いますし、私が日本を好きな理由の一つです。今でもこういう一面を見つけるたびに、嬉しくなります。
世界と日本の架け橋として、加速するグローバル化を支える。
ベバストグループとの出会いは、ちょうどこれからの自分自身のキャリアプランについて考えているときにヘッドハンティングを受けたことがきっかけです。当時、ベバストでは、グローバルカスタマーグループという組織体制を作っている最中でした。
ベバストは創業以来、各国の企業との合弁会社を設立することにより、その地域により早くビジネスを定着させるという方法をとってきました。しかし、今や自動車メーカーのほとんどがグローバル戦略を打ち出し、標準化がどんどん進められる時代です。
各国でローカライズすることも大切ですが、お客様である自動車メーカーの要望に合わせて全世界で標準化された部品を納品し、お客様のグローバルプロジェクトをサポートするということが求められているのです。
例えば、同じ車を中国、アメリカ、日本で同時に生産するグローバルプロジェクトでは、それぞれの国の工場で生産しても、まったく同じ品質レベルの製品を供給できるようにしなければならない。また、日本のお客様のニーズを把握することはもちろんのこと、そのニーズをアメリカや中国の工場にも正確に伝え、日本がリードをとってグローバルプロジェクトを成功させなければならない。
新しく立ち上がるグローバルカスタマーグループで、ドイツ(ベバスト本社)はもとより、世界各国のベバストグループと日本(ベバストジャパン)との架け橋になりながら、ベバストジャパンとそのお客様のグローバル化を推進していくという仕事にとても興味を持ちました。
戦略的に推進する「事業基盤の強化(Strengthen)」と「新分野への参入(Participation)」。
現在、ベバストグループでは2つの戦略を掲げています。1つは「事業基盤の強化(Strengthen) 」、もう1つは「新分野への参入(Participation)」です。事業基盤の強化は、既存の事業であるルーフ、コンバーチブル、サーモ事業の拡大、組織力の向上を目指すことであり、新分野への参入は、拡大するEモビリティ産業におけるバッテリー事業やチャージング事業への参入です。
既存事業、新規事業ともに市場拡大については、多くの可能性を模索しています。ベバストは、OEビジネス、アフターマーケットビジネスそれぞれにおいて、すでに世界中にセールスチャネルを確立しており、この販路を有効利用して、新規事業のバッテリーやチャージングシステムの確実なマーケットシェア拡大を狙っています。
さらに、新たな販路として、例えば、ネットを利用した販売や世界に広がるUBERビジネスとの協働、ハウスメーカーとの協働によるチャージングシステムの販路開拓など、計画的に考え、行動していかなければならないことはたくさんあります。
エキスパート集団として強みを磨く。そして、活かす 。
グループにおける日本(ベバストジャパン)の位置付けは、グローバル戦略を世界各国のグループ会社とともに進めていくという点においては、他の国にある現地法人と違いはないと言えます。しかし、日本のお客様、そしてそのお客様が求めるものを知り尽くしているのはベバストジャパンです。この点において他の国のグループ会社が私たちの代わりを務めることはできないのです。
私たちの主力製品のひとつである「パノラマサンルーフ」は、ここ広島で開発・設計・製造しており、日本のお客様が要求するとおりの「薄い・軽い・強い」製品を具現化するのは、ベバストジャパンの使命の一つです。
世界の自動車生産台数のうち、約30%は日本の自動車メーカーが占めています。その点からみても、ベバストジャパンが担う役割もとても大きなものです。
コンバーチブルルーフやサンルーフというのはおもしろい製品で、とても多くの素材や部品でできています。鉄、アルミ、ガラス、ゴム、電動部品など実に様々で、まさにクルマそのものが作られている部品と似ています。
これらを組み合わせてお客様のニーズにきちんと応えられるエキスパートは世界的に見ても多くないので、この分野でビジネスを続けていることそのものが私たちの強みなのです。
そして、ここで培った奥深い技術を、新しい進出分野に活かしていきたいと考えています。先ほどお話したバッテリーシステムはまだ日本では参入が始まっていませんが、参入するとなればこれも日本国内で製造することになると思います。培った技術を十分に活かせますし、何より、バッテリーシステムはとても重たいものですから、他国から輸入するというほど非効率なことはないですからね。
変化する自動車業界の中で、私たちはどう変化するか。
ベバストグループは、製品別、ファンクション別、そしてリージョン別の組織からなるグローバルなマトリクス組織から成り立っています。また今年に入って、OEビジネスとアフターマーケットビジネスで組織を分割しました。
昨今の自動車マーケットの変化に応じて私たちも変わらなければいけないという必要性から、大掛かりな組織改編が進められています。例えば最近では自動車に関してのユーザーの関わりも購入からシェアというように変化しています。そういった時代の変化に柔軟に対応していかなくてはいけません。
先日、フランクフルトのモーターショーに行ってきましたが、機械を中心に会話されることは年々少なくなっていて、変化するライフスタイルに対してどのように製品を提供していくかという会話になっています。
同じ意志を持つ仲間と、グローバルビジネスに携わる。ここ、広島で。
ここ広島の本社には、営業、開発、製造を中心としてすべての機能が集約していますから、毎日、自分たちの製品を身近に感じながら仕事をすることができます。横浜オフィスを含めても500名程度の規模の会社ですので、大きすぎる会社とは違って、社員全員と顔見知りになることもできます(笑)。
また、広島にいながらにして、世界中の仲間とともにビジネスを進めていけるという点は、他ではなかなか経験することのできないやりがいや楽しさに繋がるはずです。ベバストは新規参入した事業も含め、すべてグローバルマーケットをターゲットに進めています。そういった観点からも、この会社に入っていただければ活躍できる分野は際限なく広がっています。
最後に、ベバストは創業者一族が全株式を保有するファミリー企業であるため、いわゆる外資系企業にあるようなドラスティックな会社ではありません。ベバストグループの本社はドイツにありますが、親会社として、世界中のグループ会社の経営に大きな関心を寄せて、密なコミュニケーションを図っています。
自動車部品のグローバルリーディングカンパニーとして、長期的視野に基づく責任のもと、ビジネスを進めていくという強い意思を持った会社なのです。