2023.02.12
広島の景況感に影響も。今さら聞けない「広島の自動車業界」基本のキ
リージョナルキャリア広島のコンサルタント、原田です。今回は広島県の主要産業の一つである「ものづくり(製造業)」の中で、自動車業界について掘り下げてみたいと思います。
広島の「ものづくり」を牽引する自動車産業
総務省・経済産業省発表の「令和3年経済センサス」によると、広島県の【製造品出荷額等】は約8兆8698億円で、全国11位。【事業所数】【従業員数】はそれぞれ4812所(14位)、20万7756人(11位)となっており、日本のものづくりを支える県の一つと言えます。
(出典:広島県HP)
そんな広島県において、【製造品出荷額等】に占める割合が最も高いのが『輸送用機械器具製造業』です(32.9%:約2兆9182億円)。特に完成車メーカー「マツダ」を始めとする自動車関連産業が牽引しており、250社を超える企業がひしめいています。
(参考)広島県HP/経済センサス
3万点もの部品を下支えするサプライヤー
自動車1台に必要となる部品は3万点にも及び、それらを製造するメーカー(サプライヤー)が完成車メーカー(広島では主にマツダ)に供給することで自動車が製造されます。
また、完成車メーカーに直接納入する一次サプライヤー(ティア1)、一次サプライヤーに部品などの製品を納入する二次サプライヤー(ティア2)といったようにピラミッド構造となっているのが特徴です。
さらに、そういったメーカーが部品や自動車を製造するための機械・設備を手掛けるメーカー/エンジニアリング企業、物流企業など非常に多くの企業が関わっており、自動車産業が"裾野が広い"と言われる所以となっています。
(出典:広島経済レポート)
なお、各サプライヤーは『東友会』『翔洋会』といった組合を組織し、会員同士やマツダとの情報交換、技術の研鑽などを図りながら、関連会社全体で産業の発展を目指しています。
東友会(63社)
【第1部会(パワートレイン系)】
- ・広島アルミニウム工業株式会社(本社所在地:広島市/売上:1252億円(2021年12月期 ※グループ計)/従業員数:5718名 ※グループ計)
- ・株式会社オンド(本社所在地:東広島市/売上:536億円(2021年5月期)/従業員数:1454名)
- ・松本重工業株式会社(本社所在地:呉市/売上:145億円(2020年12月期)/従業員数:250名)
- ・カワダ株式会社(本社所在地:広島市/売上:136億円(2021年4月期)/従業員数:578名)
- ・荻野工業株式会社(本社所在地:安芸郡/売上:113億円(2021年4月期)/従業員数:362名) ほか
【第2部会(ボディ・シャーシ系)】
- ・マツダスチール株式会社(本社所在地:安芸郡/売上:754億円(2020年3月期)/従業員数:115名)
- ・株式会社ヒロテック(本社所在地:広島市/売上:461億円(2022年3月期)/従業員数:1851名)
- ・株式会社キーレックス(本社所在地:安芸郡/売上:432億円(2021年3月期)/従業員数:1375名)
- ・株式会社ワイテック(本社所在地:安芸郡/売上:420億円(2022年3月期)/従業員数:1409名)
- ・双葉工業株式会社(本社所在地:広島市/売上:130億円(202112月期)/従業員数:358名) ほか
【第3部会(内装・外装系)】
- ・ダイキョーニシカワ株式会社(本社所在地:東広島市/売上:1166億円(2022年3月期 ※連結)/従業員数:5482名 ※連結)
- ・西川ゴム工業株式会社(本社所在地:広島市/売上:845億円(2022年3月期 ※連結)/従業員数:1392名 ※単体)
- ・デルタ工業株式会社(本社所在地:安芸郡/売上:564億円(2021年12月期)/従業員数:1250名)
- ・株式会社モルテン(本社所在地:広島市/売上:394億円(2021年9月期)/従業員数:666名)
- ・株式会社東洋シート(本社所在地:安芸郡/売上:373億円(2021年度)/従業員数:796名) ほか
翔洋会(19社)
- ・マツダロジスティクス株式会社(本社所在地:広島市/売上:511億円(2022年3月期)/従業員数:1950名)
- ・株式会社日本クライメイトシステムズ(本社所在地:東広島市/売上:212億円(2022年3月期)/従業員数:450名)
- ・トーヨーエイテック株式会社(本社所在地:広島市/売上:208億円(2022年3月期)/従業員数:679名)
- ・NSウエスト株式会社(本社所在地:庄原市/売上:142億円(2022年3月期)/従業員数:496名)
- ・マイクロテクノ株式会社(本社所在地:東広島市/売上:38億円(2021年3月期)/従業員数:186名) ほか
「100年に1度の大変革期」を迎える自動車業界
自動車業界全体では"100年に1度の大変革期"と言われる大きな構造の変化に直面しており、そのキーワードとなるのが『CASE(ケース)』です。
『CASE』は「Connected(コネクティッド(IoT)化)」、「Autonomous(自動化)」、「Shared(シェアリング)」、「Electric(電動化)」の頭文字をとった造語で、自動車業界の次世代を象徴する言葉として使われています。
マツダにおいても、CASE時代に対応するための中期経営計画と、2030年に向けた経営方針を発表。2025年~2030年にかけて複数のEVモデルを導入、また2030年には生産するすべての車に電動化技術を搭載する予定となっています。
EV化によって苦境に立たされるサプライヤーも
先ほど「1台につき3万点」と紹介した自動車部品ですが、EV化によって必要部品は2万点にまで減少します。そうすると、"打撃を受ける"サプライヤーが出てくることになります。
そのため、ここ広島でも、培ってきた技術を転用してEVに適合する新製品を開発したり、自動車以外の産業への展開を狙うサプライヤーが増えています。
原材料の高騰によって生産コストが上昇するなど、足元の経営環境も変化している中で、大きな岐路に立っているマツダとサプライヤー。その動向を俯瞰的に見ていくことで、今後の広島の景況感が見えてくると言っても過言ではありません。
(参考)2022.12.31 日本経済新聞「EV販売、踏み込むマツダ 2030年に4割達成への加速戦略」